【銘柄分析】BHP Billiton (BHP) 〔2014年6月期〕

ASX上場企業のBHP Billiton(BHPビリトン)の分析となります。世界最大の鉱業会社です。

会社概要

ASX上場企業のBHPとのロンドン証券取引所上場のBillitonが2001年に合併した鉱業会社。主に鉄鉱石・石炭・銅・石油ガスを採掘し、販売している。BHP、Billiton共に19世紀に創業した歴史ある企業である。ASX、ロンドン証取両方に上場する二元上場企業。本拠地はオーストラリアのメルボルン。

会計年度は7月~6月。2014年6月期の売上は672億米ドル(円/米ドル=120円とすると約8兆円)、純利益は138億米ドル(約1兆6,500億円)。売上・純利益共に過去10年間で順調に伸びており、どちらも年平均約9%の増加率。ROE=16.1%。

ASX上場のBHP Billiton Limitedの時価総額は1,363億豪ドル(円/豪ドル=90円で12兆2,670億円)。

株価はグーグルファイナンスにて確認可能。

ところがBHP Billitonは二元上場会社のため、ASXとロンドン証取どのように株式の権利が分かれているか考慮しなければASX上場分の一株あたりの純利益やPER配当金等を計算できない。これについては後日記事をアップしていきたい。

BHP BillitonのIRページはこちら。

財務諸表分析

Annual Reportから過去10年分の数値を筆者がまとめた。bhp sales history

  • 直近の投下資本利益率は11%だが、2011年や207年には32%にもおよんでいる。景気循環的。要因はコモデティ価格。
  • 有利子負債/総資産=22.8%と負債を抑えられている。

2014年Annual Report12ページに業績に影響を与える主なコモディティ価格推移の表がある。

BHP Commodity price

売上・利益とコモデティ価格は高い相関関係にあることが分かる。

2014年6月30日時点のバランスシートをエクセルで日本語でまとめた。分かりやすさを重視し、項目も独断で絞り込んだ。正確な項目は2014年Annual Reportの220ページをご確認頂きたい。

BHP Balance sheet.JPN

上記でも記載したが、総資産に対する有利子負債は22.8%と財務体質は良い。

キャッシュフローの推移は以下の通り。BHP CF

*2011年と2006年のキャッシュフロー計算書は後の年度で数値が修正されているため、上記エクセル表では期末現金残高と翌年のCFとの計算が合わなくなっている。修正後と前との整合性をとることができなかったが、分析する際に大して困ることも無いのであまり気にしなくても良いだろう。(どうやって修正すればいいかお分かりの方がいらっしゃいましたらコメントお願いします。)

基本的に営業キャッシュフローの範囲内で投資を行っている。

まとめると、財務体質が良く、キャッシュもうまく回っており、コモデティ価格に影響され景気循環的であるものの、売上利益共に順調に成長している。また、税引き後利益のうち多くの割合を配当にまわしている。単なる大企業というだけでなく、数値の上では非常に優良企業といえるだろう。

 

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

採掘会社のビジネスモデルは以下の通り。

1.探鉱:鉱物や石油ガスを探す。

2.開発:探鉱の結果、商業的に採掘が出来そうだと判断されれば、その場所に生産のために施設を建設する。生産施設だけでなく、鉱物輸送用の道路・鉄道・パイプラインなども建設する。

3.生産:開発した現場で生産する。

4.販売:生産した鉱物を、基本的にコモデティ価格に則って販売する。

うまく探鉱で有望な鉱区を見つけ、なるべく安く開発・生産することが肝。マーケティングよりも効率的なオペレーションが重要である。コモデティ価格が上がれば、追加の投資をすることなく「たなぼた利益」を得られる。

【競合企業の新規参入】

BHP Billitonが保有する生産資産は、各国政府により独占利用が認められている。新規参入企業がBHP Billitonの生産施設から勝手に採掘することはできない。新規参入企業は他社が手をつけていない鉱区で探鉱し、うまく商業生産できる鉱物を当てる必要がある。

競合他社による鉱物生産を防ぐ手立てはないが、新規参入企業が既存企業に脅威を及ぼすようなことは考えにくい。理由は以下の通り。

  • 既に低コストで生産できる優良資産を持っているBHP Billitonにとって、自分の生産施設へのアクセスは制限できる。
  • 探鉱で有望な鉱区を見つけるには相当の技術・ノウハウが必要。鉱区を取得するための政府とのコネも必要。
  • 基本的にコスト減を実現するには大規模な生産設備が必要で、巨額の投資資金を要する。

【現状の競合状況】

BHP Billitonが鉱業では最大手。大手競合企業では英/豪のRio Tinto(リオ・ティント)やブラジルのヴァーレなどがある。中小規模の鉱業会社は多々ある。

競合他社との戦い方として、いかに低コストで生産するか、ということに尽きるだろう。

【無形資産】

基本的に政府から採掘のための鉱区を付与された場合、生産できる限りは独占的にその鉱区から採掘し続けられる。政府からのライセンスが最大の武器。競合他社は自社の優良資産に手出しできない。ブランド・特許は高収益たる要因になりえない。

【スイッチングコスト】

顧客にとり、石炭や鉄鉱石がBHP Billiton産である必要はない。安ければどこからでも買う。よってスイッチングコストによる顧客囲いこみで高収益を得ることはできない。

【ネットワーク効果】

なし。

【コスト優位性】

BHP Billitonは低コストで生産できる優良資産を世界中に保有している。様々な経緯で(幸運もあっただろうが)手に入れた、低コストで生産できる場所に独占的にアクセスできることが優位性につながっている。

【まとめ】

既に保有している「低コストで生産できる鉱区」に独占的にアクセスし、生産できることが高収益の要因。また、独占的なアクセスは政府により保証されている。

最近の状況

  • 2015年に「South32」という会社を設立し、BHP Billitonの中でも主要でないマンガン・ニッケル・銀等の採掘事業をスピンアウトした。大規模資産に注力し、マネジメントを効率的に行いたいとのこと。
  • 事業規模は小さくするが、「配当は減らさない」とマネジメントは述べている。(株主を気にしている?)
  • 中国の景気減速に伴い、全般的にコモディティ価格が下がり基調。
  • 2015年6月期決算のプレゼンテーションによると、純利益は2014年と比較し86%減の19億米ドル。中国を中心とする景気減速に伴うコモデティ価格の下落が直撃した格好。
  • 売上に占める割合は、鉄鉱石が40%弱、銅・石油ガスが25%程度、石炭が15%弱。
  • 生産地は50%強がオーストラリア、残りを南北アメリカ(チリの銅鉱山、アメリカの石油ガス)が占めている。
  • 中国と日本が販売先の50%を占める。

BHP Portfolio

リスク

  • 政府による鉱区ライセンス剥奪がリスク。政情が安定的なオーストラリア・北米が採掘地点なのでリスクは低い。南アメリカは比較的リスクは高い。
  • 増税。コモディティ価格が上がると「たなぼた利益」すなわち経済レントに課税しようとする傾向がある。オーストラリアでは資源利潤超過税が課されたが、2013年の総選挙後に政権交代したのち、この税が廃止された。比較的リスク高い。
  • 世界経済減速によるコモディティ価格の下落。

 

今後の展開

  • BHP Billitonは中期的に毎年5%成長を目指すとしている。
  • 中国景気の減速で、短期~中期的にコモディティ価格は下がり、利益圧迫要因となるだろう。
  • とはいえ長期的には人口増や途上国を中心とした都市化の進展で、鉄鉱石・銅・石油ガス・石炭の需要は上昇し、価格もそれに伴い上昇していくだろう。

過去の株式バリュエーション

BHP Billitonは二元上場会社のため、ASX上場株式分の一株あたり純利益・配当を計算する必要がある。二元上場会社の時価総額については当ブログの記事をご参照いただきたい。

BHP Billiton Limited(豪)の株価 × (BHP Billiton Limited の株式発行数+ BHP Billiton Plc(英)の株式発行数) を時価総額とし、毎年のPERおよび配当利回りを計算した。

BHP Per

BHP Billiton Limited株は株価・配当が豪ドルなので、米ドル→豪ドルに換算する際に為替の影響を受ける。PER10~15倍を行ったりきたり、配当利回りは年々少しずつ上がっていって2014年6月期では3.78%となっている。配当金の支払い額はこの10年で約4倍と順調に増えている。

2015年8月28日現在のBHP Billiton Limitedの株価は25.49豪ドル。時価総額は1,363億豪ドル。2014年6月期の純利益を分母とするとPERは12.37倍。しかしBHP Billiton2015年6月期の決算数値における純利益を分母とするとPERは70倍程度になる。

BHP Billitonのような景気循環株は純利益が変動する。特に2015年6月期の純利益は前年比86%減となっている。

分析を終えて

近年の中国の経済成長によるコモディティ価格の上昇で恩恵を受けた企業といえるでしょう。また、Annual Reportに詳しく記載がありますが、世界各地に低コストで生産できる鉱区を保有しています。これらの鉱区を保有している、というのが高収益のすべてといっても過言ではないでしょう。もちろん、生産効率化の努力をしているとAnnual Reportには書いてありましたが。

オーストラリアは非常に広大で、北部に行くと採掘会社専用の長大な石炭貨物列車が走っています。これらの建設には非常に大きな投資が必要となり、中堅規模会社では対応しきれないでしょう。

BHP Billitonはオーストラリア西部に巨大な鉄鉱石の採掘場を保有しています。日本企業による購入のコミットメントがあってはじめてこの採掘場の開発が進みました。確実に買う客が居ないことには巨大投資を決行できなかったでしょう。1960年~70年代のことです。同社の高収益の源泉の一部には、日本の存在もあったんでしょうね。生産者と日本側購入者をとりまとめた、当時のウエスタンオーストラリア州首相(日本でいう知事)の貢献も大きかったようです。(自伝はけっこう面白かったです。)

景気循環株なので、コモディティ価格が下落している今買って、次の資源ブームまでジッと保有する、というのも一つの手かもしれません。

 

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