オーストラリア首相交代 ターンブル首相誕生

2015年9月15日にオーストラリアの首相がトニー・アボット氏からマルコム・ターンブル氏に交代しましたので、解説していきたいと思います。私には、ターンブル氏によるクーデターのように思えます。

オーストラリアの政治制度

オーストラリアの政治制度は日本とよく似ており、イギリス式の議院内閣制「ウエストミンスター・システム」をオーストラリアでも採用しています。もともとオーストラリアはイギリスの植民地でしたので、宗主国と同じ政治システムを導入するのは理にかなっています。

オーストラリアはオーストラリア女王たるイギリス女王エリザベス2世を君主とする立憲君主制で、女王の名代である総督が行政の執行権・閣僚の任命権・法案の裁可・軍隊の指揮権などの強い権限をもっています。しかし、慣習上総督は連邦議会下院で過半数を取った政党の党首を首相に任命し、首相が内閣を形成して行政の執行を行います。というわけで、総督には政治的野心がない人が任命されます。もし政治的野心がある人が強大な権限を持つ総督に任命されると大変なことになりかねません。

オーストラリアには連邦とそれぞれの州に議会があります。州議会は日本でいう県議会に相当します。連邦議会が日本でいう国会に相当します。

連邦議会は下院と上院に分かれています。下院の定員は150名、上院の定員は76名です。上下院ともに選挙で議院が選ばれます。下院と上院は実質的に同等の権利を持っているものの、上院には課税法案や支出法案についての発議権が無く、下院のほうが広い権限を有しています。下院で過半数を取った党の党首が総督に任命され、首相となります。日本でいうと権限の強い衆議院で過半数を取った政党の党首が首相になるという制度と全く同じです。

2013年連邦選挙後の議会勢力

オーストラリアは2大政党制で、これまで自由党・国民党の連立政権である保守連合と、労働党が政権を担当してきました。保守連合は小さな政府をめざす自由市場経済派、労働党は労組をバックにした2大政党以外には、緑の党、パーマー統一党や無所属の議員で議会が構成されています。

2013年の選挙の結果、保守連合が勝利し、それまで与党だった労働党から政権を奪取しました。最大連立与党である自由党党首のアボット氏が首相に任命されました。

勢力分布は下記の通りです。

上院:保守連合33名、労働党25名、緑の党10名、パーマー統一党3名、その他5名の合計76名。

下院:保守連合90名、労働党55名、緑の党やその他5名の合計150名。

アボット前首相の交代劇

アボット前首相は日本の安倍首相と非常に親密で、良好な日豪関係を築いていました。オーストラリアは日本にとって経済面のみならずアメリカに次ぐ安全保障面でのパートナーになりつつあります。

しかし、内政では景気が上向かないこと、緊縮財政などで各種予算がカットされたことでアボット前首相そして保守連合の支持率が低下していきました。

決定的だったのは、2015年1月のオーストラリアデーというオーストラリアの建国記念日に、アボット前首相が独断でエリザベス女王の夫であるエジンバラ公フィリップ殿下にオーストラリア最高の栄誉とされるオーストラリア勲章の「ナイト」の称号を与えたことです。

労働党はもちろん、自由党内からも「もうオーストラリアは植民地でないのに、なぜいまさら植民地時代のようにイギリス王族に勲章を与えるんだ。時代錯誤もはなはだしい」と批判のオンパレード、挙句の果てには党首失格まで言われる始末で、アボット前首相もショックだったといわれています。アボット前首相は保守的な政治信条を持ち、君主主義者といわれていましたが、こればかりはやりすぎたようです。

直後に2月に自由党内で党首交代を求められましたが、党内の選挙で61対39で勝ち、なんとか首相の座を保つことができました。

しかし、2016年にまた連邦議会選挙が迫る中、勲章授与問題や経済低迷で保守連合の支持率が低下、与党内には「アボットで次の選挙に勝てるのか」という悲観的な空気が醸成されていたようです。

ついに先日の9月14日にアボット内閣で通信相を勤めていたターンブル氏がアボット前首相に党首交代を求め、党内選挙の結果54対44でターンブル氏が勝利、アボット氏は首相の座を降りることになりました。

アボット前首相の右腕として、副党首ならびに外相を務めたジュリー・ビショップ氏は、2月の党内選挙ではアボット氏を支えたものの、9月の党内選挙ではターンブル氏側につきました。結局彼女は勝ち馬に乗ったわけで、ターンブル氏の下でも引き続き副党首、外相を務める模様です。

ターンブル首相について

年齢は今年で60歳、もともとビジネス界で成功した人物で、自分で投資銀行を立ち上げたり、オーストラリアのゴールドマンサックスの責任者になったりと巨万の富(100億円以上の個人資産があるとのこと)を持っているそうです。金の次は権力・・・といったところでしょうか。連邦議会議員の中では、パーマー統一党党首のパーマー氏(この人も相当な大富豪で・・・目立ちたがりのおっちゃんです)に次ぐ第2番目の資産額を誇ります。

この人の息子さんの奥さんが中国人であるため、中国との関係が深いといわれています。明らかに日本贔屓のアボット前首相と比べると、日本との関係は疎遠になるかもしれません。が、ビジネスライクな人物なので中国と日本、どちらともうまく付き合うと思います。

ターンブル首相の政策

まだ組閣も終わっていないので現時点では不明ですが、おそらく前アボット首相時に不人気だった緊縮財政を見直すことになるといわれています。そうなると金がいるわけで、アボット前首相が廃止した、鉱物販売の利益に課税する「資源超過利潤税」を復活させる可能性がある、との新聞記事を見ました。

そうなるとオーストラリアの鉱業会社、特にBHP Billiton、リオティントなどが影響を受けることになります。

オーストラリア企業の株式投資をするにあたり、新首相が打ち出す政策に注目する必要があるでしょう。特に税制です。来週以降もどのような政策を実施するか確認していきたいと思います。

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