【銘柄分析】Ainsworth Game Technology(AGI) 〔2015年6月期〕

ASX上場企業のAinsworth Game Technology(ティッカーコード:AGI)の分析を行います。カジノにあるスロットマシーンの製造業者です。私はこの会社の株を持っておりますので、割り引いてお読みいただけたらと思います。

会社概要

1995年創業。創業者で、現在92歳のLen Ainsworth氏は1954年にAristcrat Leiaureというこれまたスロットマシン製造業を創業した人物。AristocratもASX上場企業である。Len氏は1994年に癌と診断されたあと、Aristocratを辞め、病気が治った1995年にAinsworth Game Technology社を創業。AristocratはAinsworthの競合企業である。Ainsworthの株は創業者かつ会長であるLen氏がおよそ50%を握っている。ASXには2001年に上場。

スロットマシーンの開発・製造・販売を行う会社。販売先は、カジノのオペレーターである。日本でいうとパチンコ機のメーカーと同様のビジネスモデルといえる。2016年度からはオンラインカジノやソーシャルゲームにも参入する予定である。

会計年度は7月~6月。2015年度6月期の売上高はおよそ2億4,000万豪ドル((円/豪ドル=85円とすると約204億円)、純利益は7,600万豪ドル(約65億円)。

売上は伸びているが、2015年度は前年度と比較し若干の減少。2010年度までは赤字であったが、2011年度から利益が出始め、年を経るごとに利益額が増えていっている。

株価はグーグルファイナンスで確認できる。IR情報はAinsworth Game Technology社IRページで確認することができる。

財務諸表分析

Annual Reportより筆者が過去のデータをまとめた。AGI 売上推移

残念ながらAinsworth社のホームページには2010年までのAnnual Reportしか無かったため、2009年までの過去7年間の数値を載せている。

  • 利益が出始めた2011年以降の純利益率は25%を超えている。投下資本利益率も2011年以降一貫して20%を超えている。非常に収益力が高い。
  • 2012年に増資を行った。同時に有利子負債が大幅に減少。
  • 2015年には、運転資本を賄うためという理由で借り入れを行っている。

2015年6月30日のバランスシートを日本語でまとめた。分かりやすさを重視するため項目を絞っている。詳細はAinsworth社 Annual Reportを参照いただきたい。AGI BS

有利子負債比率2.7%と非常に低く、良好な財務体質であるといえる。

キャッシュフローの推移は以下の通り。AGI CF

2009年までのキャッシュフロー計算書までしか入手できなかったので、過去7年分を示している。基本的に営業CFの範囲内で投資をまかなっている。2015年度はアメリカに製造拠点を建設したため、投資CFが大きな赤字になっている。配当も気前良く払っており、純利益の約50%を配当として株主に還元している。

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

Ainsworth Game Technologyのビジネスモデルは以下の通り。基本的には普通の製造業と同じ。

スロットマシンの研究開発→製造→カジノ運営者へ販売。ギャンブルに関わる商品なので、スロットマシンの製造には政府の認可が必要となる。販売したい地域の政府機関から認可をとる必要がある。

【競合企業の新規参入】

スロットマシンの製造・販売には政府からの認可が必要となる。政府としても粗悪なスロットマシンの流通を阻止するのと、あまり多くの企業に認可を渡して管理が面倒になるのを防ぎたいというインセンティブがある。簡単には新規参入業者がスロットマシン販売市場に参入することができない。1995年創業の後発企業であるAinsworthがスロットマシン市場に参入できたのは、50年あまりの業界経験がある創業者のLen Ainsworth氏の経験や人脈のおかげだったと考えられる。総合すると競合企業の参入は不可能ではないものの、困難と考えられる。

【現状の競合状況】

オーストラリア企業で、Lens氏が60年前に創業したAristocrat Leisure(2014年10月~2015年3月の半年間の売上6億8500万豪ドル、純利益は約1億豪ドル。単純に2倍すると1年で13億7千万豪ドル、利益は2億豪ドルになる計算。)AristocratはAinsworthの売上の5倍以上の規模がある。Ainsworthにとって非常に手ごわい競合相手といえる。

その他にイタリアのGtechなどが大手の競合相手である。この会社もAinsworthよりも規模が大きい。

【無形資産】

Ainsworthの最大の無形資産は、政府から得たスロットマシン認可である。現在Ainsworthは世界中で自社製品の認可を得るべく申請をしている。特に、北米における認可取得を進めている。

【スイッチングコスト】

顧客であるカジノ運営者は、マシンの設置・買い替えにおいて必ずAinsworth社製を選ばないといけない理由はない。なるべく売上を稼げるスロットマシーンを置きたいというインセンティブがあり、Ainsworth社製のマシンが売上を稼げるというのでれば、購入する。特にスイッチングコストはないといえる。

【ネットワーク効果】

なし。ソーシャルゲームやスロットゲームにはあるかもしれないが、現時点では不明。

【コスト優位性】

Ainsworth社が競合他社より低コストでスロットマシーンを製造できるわけではない。Arisotcratと比較すると売上が小さいので、規模の経済があるというわけでもない。

【まとめ】

政府認可という新規参入の困難性により、高収益が守られている。

しかし、Aristocratといった競合企業とは熾烈な競争を継続しており、Ainsworthだけが競合他社よりも高収益を享受できるというわけではない。

最近の状況

  • 2015年6月期において、オーストラリアでの売上が35%減、アメリカでの売上が47%増、その他地域の売上が40%増となり、合計すると前年比1.4%減。一方同時期にAristocratはオーストラリアでの売上を伸ばしており、激しいシェア争いをしている。
  • 従来はA560というマシンで売上を伸ばしていた。2015年8月にA600という新マシンを展示会にて発表、顧客の受けは上々とのこと。

リスク

  • 政府によるスロットマシン認可の剥奪。よほどのことがない限りこのような事態にはならないだろう。
  • 競合他社に顧客(スロットマシン置き場)を奪われる。

ここ数年はAinsworthが破竹の勢いでシェアを広げていったが、2015年にはAristocratに反撃されており、競合他社のシェア奪い合いが最大のリスクといえるだろう。

今後の展開

  • 新発売の商品A600をオーストラリアで売り込みシェア拡大を目指す。
  • アメリカ(ラスベガス)での新拠点建設後、アメリカにおける売上シェア拡大を目指す
  • オンラインゲームを2016年度より発売開始する。

過去の株式バリュエーション

過去の株価と一株あたり利益、PER等をまとめた。AGI share price

2015年9月18日現在だと株価は2.85ドル、PERが約13倍。配当利回りは約3.5%。

分析を終えて

2009年の6月末の株価と比較すると、2015年9月18日の株価は約37倍と、6年ですさまじい上がり方をしています。やはり株というのは、儲かるか儲からないか定かではないときに仕込んでおいて、後で値上がり益を楽しむというのが良いのでしょう。

6年前と比較してかなり上がったとはいえ、競合のAristocrat比べると時価総額はまだ五分の一、北米を中心にまだまだ売上を伸ばす余地があると思っています。それにPERも13倍と、割安だと感じています。2015年の多くの日本のREITよりも配当利回りが高いですし。

スロットマシンというのは、カジノ運営業者の懐具合にもよりますが10年から12年に1回、買い替えサイクルがあるようです。オーストラリアではスロットの設置台数が20万台程度、ということは年間だいたい2万台前後が買い替え、アメリカ合衆国では100万台程度、年間10万台程度のマシン入れ替えがあるということです。アメリカの市場はオーストラリアの5倍程度あるといえます。しかし人口規模からいうとオーストラリアには既にかなりのスロットマシンがあると思いますが・・・・。たしかにここオーストラリアではスロットでよく遊ぶといわれるブルーカラーの賃金が高く、それだけマシンの需要が多いのでしょうが。

個人的にはオンラインカジノやソーシャルゲームに期待しています。パズドラで大ホームランを放ったガンホーやモンストのミクシィのように、一発当てて巨額の収益を生んでほしいという願望が頭をよぎります。もちろん、オンライン売上がこれからどうなるのか非常に不確実です。当面はオンラインゲームの売上は勘定に入れず、従来のスロットマシン販売による収益のみを売上見込みとして株を保有しようと思っています。

【銘柄分析】Ainsworth Game Technology(AGI) 〔2015年6月期〕」への4件のフィードバック

  1. まゆか

    AGIがいいですね。昨日は大きく下げましたが(-2.696%)、11月22日からずっと上げてきました。
    これもトランプ効果?と単純に思ってしまいました。
    カジノ王のトランプが大統領になったことで、なにかAGIに恩恵があったのかと。
    この株の魅力は、その爆発力ですよね。なにかのきかっけで、ありえない上昇をしそうです。
    ディンゴさんの言う通り、「儲かるか儲からないか定かではないときに仕込んでおいて、後で値上がり益を楽しむというのが良いのでしょう。」なんですよね~
    でも、それがなかなかできない(涙)

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      まゆかさん

      AGIはオーストラリアではAristocrat にマーケットシェアを取られてしまいました。
      それもあり、想定利益を下げる発表をしたことで株価も下落してしまいました・・
      ところが北米はじめオーストラリア国外では売上を順調に伸ばしているので今後の爆発的な成長を期待できます。
      個人的にはスマホカジノの収益が上がらないかな~と思っています。

      配当利率は5%を超えていますし、AGIはのんびりと持ち続けたいと思います。
      儲かるかわからないけど、配当金もくるし、のんびり待てばいいかな、という心構えでいきたいと思っています。

      返信
  2. まぬか

    >ディンゴさん

    この辺は、契約一つでどーーんと上がりますから楽しみではありますね。オーストラリアで契約取れなくての現在ですから。ちなみに日本ではカジノ法変えるとか言ってますが、これも関係あるんでしょうか。それとも日本はまた違ったルートがあるかもですね。パチンコとかスロットがあれだけありますものね。
    スマホのカジノかあ。それは、実現したらすごいですね。
    ただ上げ下げ激しいので・・・・持ち続けられるかな~

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      この会社はアメリカの売り上げが上がっています。トランプ政権になり、ブルーカラー労働者の経済状況が良くなれば
      カジノやスロットマシーンの需要はあがると思います。

      一方、日本の市場には食い込むことはすぐにはできないと思いますね。認可を取るのに時間がかかりますし。
      いかんせん、この銘柄が上がるとうれしいのですが、果報は寝て待てですごしたいと思います。

      返信

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