【銘柄分析】Asia Pacific Data Centre (AJD)〔2015年6月期〕

今回は初のASX上場のReitを紹介したいと思います。Asia Pacific Data Centre (APDC)データセンターの建物を保有する会社です。Reitといえば本当に投資家のために運営しているのか、つまりむやみやたらに規模だけ大きくしようとして、ゴミ物件をスポンサー企業から割高な価格で買わないか、ガバナンスを注視する必要があると思います。が、今回の記事ではガバナンスはほっといて、どんな会社かを紹介したいと思います。

会社概要

2013年、NEXTDC(NXT)というASX上場のデータセンター運営会社から不動産部門だけスピンアウトする形でASXに上場。シドニー・メルボルン・パースの3都市にそれぞれ1つずつ、合計3棟のデータセンターが入る不動産を保有している。テナントはNEXTDC1社である。従業員は社長含めて3名のみ。

NEXTDC社とは2027年・28年までの長期の不動産賃貸契約を結んでいる。賃貸借条件は、トリプルネットリースというもので、純粋な賃料に加えて、税金・修繕費用・保険料の3種類の費用を全てNEXTDC(賃借人)が負担するというものである。というわけで、APDCは収入のほとんどが利益になる。(費用はほとんどNEXT DC持ち)

会計年度は7月~6月。2015年度6月期の売上高はおよそ2,868万豪ドル((円/豪ドル=85円とすると約24億円)、純利益は2,593万豪ドル(約22億円)。

株価はグーグルファイナンスで確認可能。IR情報はAsia Pacific Data Centre社ホームページで確認することができる。

財務諸表分析

Annual Reportより筆者が過去のデータをまとめた。

2015AJDrevenue

  • 2013年1月に上場したので、2013年度の売上&配当金などは半年分のみの数値。
  • 2013年度にメルボルンおよびシドニー、そして2014年度にパースのデータセンター不動産を取得。よって、2014年度に売上が急上昇している。
  • トリプルネットリースなので経費はほぼテナントであるNEXTDC社持ち。よって利益率が非常に高い。

2015年6月30日のバランスシートを日本語でまとめた。分かりやすさを重視するため項目を絞っている。詳細はAsia Pacific Data Centre Annual Reportを参照いただきたい。

2015AJDBalance Sheet

有利子負債比率は14.4%と低い。不動産の賃料はそうそうとりっぱぐれることはない中で、有利子負債も多額でないので財務的には問題ないといえるだろう。

キャッシュフローの推移は以下の通り。

2015AJDCashFlow

2013年度はIPOにて資金調達を実施。メルボルンとシドニーの物件を取得。2014年度は負債にて資金調達を実施している。この年度にパースの物件を取得している。2015年度は物件を取得していないため、投資CFはゼロである。配当金は2014年・2015年に1000万豪ドル程度支払っている。(財務CFの内数に入っている。2015年の財務CFはほとんどすべて配当金払い。)

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

APDCのビジネスモデルは不動産の大家さんと同じ。

【競合企業の新規参入】

NEXTDC社とは2028年までは契約を結んでいるので、あと10年以上は競合に客を取られることはないだろう。その後どうなるかは注視する必要はある。

【無形資産】

特に見当たらない。

【スイッチングコスト】

NEXTDC社にとってデータセンターを他のところに移すのは面倒だと思われる。とはいえ絶対に無理かというとそうでもない。スイッチングコストはあるものの、あまりにAPDCが高い賃料を取ろうとすると、出て行ってしまうだろう。

【ネットワーク効果】

なし

【コスト優位性】

これもないと思われる。データセンターはサーバーを冷やすために大量の電気を消費するが、APDCが特別安く電気を購入できるわけではない。

【まとめ】

はっきり言って特に強みはない。あえていえばスイッチングコストが高いので、NEXTDC社から見ると引き続きAPDC社と取引したい、ということぐらいだろう。

最近の状況

  • 2014年2月にパースのデータセンター建屋を取得して以来、特に物件を取得していない。

リスク

テナントがNEXTDC社のみというのが最大のリスク。NEXTDC社が倒産すると一挙に収入がなくなることになる。NEXTDC社の財務を調べてみると、ここ数年赤字続きだったが直近は黒字になっている。NEXTDC社の財務状況を常に注視する必要がある。

今後の展開

NEXTDC社がデータセンター用の建物を新たに開発する場合に、APDC社が不動産を取得するということになろうかと思われる。もしくは自社で開発してNEXTDC社以外のテナントをつけることも考えられるが、いかんせん従業員が3名しかいない超小規模会社なので、基本的に不動産開発はNEXTDC社に任せっぱなしになると思われる。成長するかどうかはNEXTDC社のビジネス次第ということになるだろう。

過去の株式バリュエーション

過去の株価と一株あたり利益、PER等をまとめた。

2015ajdshareprice

2016年5月6日現在だと株価は1.41ドル、PERが約6.2倍。配当利回りは約6.5%。

分析を終えて

会社自体は非常に単純で、データセンター用の不動産を保有するだけ、維持・税金などはすべてテナントであるNEXTDC社が管理するというビジネスモデルである。(こんな単純なビジネスならネイティブスピーカーでない私でもなんとか会社経営できるかも?)

4棟目以降の物件についてはNEXTDC社のビジネスの成長次第だと思います。問題はNEXTDC社が引き続きデータセンター運営会社として存続するかが肝になると思います。最近のIT業界はクラウド化が進んでいるので、データセンター自体のニーズはあるのですが、アマゾンのAWSやマイクロソフトなどの超巨大な競合に負けてしまうのではないかな・・・という懸念が個人的にはあるのですが、どうでしょうか。。詳しい方に今後のデータセンタービジネスの展望がどうなるか、議論をしてみたいところです。とはいえ配当利率が6.5%と、とても魅力的です。

今回はデータセンターReitを紹介しました。オーストラリアはまだまだ人口が伸びます。2050年には現在より50%以上人口が増えると言われています。ということは、これからも不動産ニーズは伸びるのでオーストラリアのReitは投資対象としては有望なのではないかと思います。これからも少しずつ紹介していきたいと思います。

【銘柄分析】Asia Pacific Data Centre (AJD)〔2015年6月期〕」への3件のフィードバック

  1. デイちゃん

    ありがとうございます。
    リートはいいなって思うんですが、日本の証券会社からは買えないんですよね。
    金融庁への登録の関係らしいですが。

    さてさて、最近オーストラリア株が、じりじりと上がってきましたね。
    豪ドルは安いので、円換算では利益は出ないのですが、豪ドルベースではそろそろ利食い?と思っています。
    で、豪ドル建ての劣後債だと利回り4.5%くらいのがありそうなので、株を売って乗り換えようかと。
    円での計算でマイナスなら税金はとられないし。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      デイちゃんさんへ

      豪州リートは良い投資対象だと思います。
      日本も金融ビックバンとか20年くらい前に言っておきながら、全然グローバルな運用ができませんよね・・・。
      外国の証券のほうが一般的に利率も高いので、国民に外国投資してもらって運用益・配当金・利息に課税すれば税収も上がって政府としても満足だと思うのですが・・・。

      個人的にはまだまだ金利が安くなると思いますのでしばらく株を持ち続けようと思いますがコモディティ価格がまた上がってきたら利上げになるはずですので、そのあたりに債券に乗り換えようかな、と考えております。そういや最近また利下げしたので対円では豪ドルさらに下落するかもしれないですね。対米ドルではすごい下がっていますし。私はFXの予想端から無理と考えていますので、為替動向は気にしないようにしていますが。

      返信
      1. デイちゃん

        なるほど。やはり現地にいると、敏感にいろいろわかるんですね・・・。
        最近、オーストラリア株が上がってきたので、そろそろ売りかな?と思ったのですが。
        オーストラリア株って、なんとなく、5月ごろ上がるような気が?
        豪ドルはこれから下がるという予想の人が多いみたいですね。
        とりあえず、豪ドルベースでプラスになったら、売って債券にしようかな。
        でもまあ、また中国ショックが起きるかもしれませんからねえ・・。

        返信

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