【銘柄分析】Transurban(TCL)〔2016年6月期〕

最近事情があり日本に帰っていました。久々に日本にいて気づいたのは

・(最近豪ドルが安いとはいえ)物価が安い。

・飲食店など、サービスが非常に丁寧。これでこの値段はありがたい。でも地方都市(人気観光地)に旅行した際、飲食店で観光客があふれてサービスどころでなかったところもあり、人手不足のしわ寄せが徐々に日本を包み込みつつあるのでは・・・と思った

・(当たり前だが)どこにいても人が多い。

・外国人が多い

こういったところです。日本企業は世界一厳しい環境下でサービス競争しているので、収益性が低くなる(株主の取り分も少なくなる)のは仕方がないかなとも思いました。そもそも生産性が低いとも言われていますが・・・。一方オーストラリアではサービスレベルは低くても、そもそも競争もあまり激しくないので、日本と比べて収益性が高くその分株主の取り分も多くなるのかな・・・と思います。消費者としては損ですが、株主としては、競争環境が激しくないほうが配当などの分け前が増えていいのかもしれませんね。

今回はオーストラリアとアメリカで有料道路を保有・運営する会社であるTransurbanをご紹介したいと思います。

有料道路ということで、これまでご紹介したパイプライン・送電線・空港と似たようなインフラビジネスとなります。インフラビジネスということで非常に安定した収益を期待することができ、これまでの配当金払いも安定しています。

会社概要

Transurbanはオーストラリア東海岸ならびにアメリカワシントンDC周辺の有料道路を保有・運営している会社。1996年から現在のビジネスを行っている。本社はメルボルン。

政府から有料道路の建設・保有・運営の権利を獲得し、通行料を車両から徴収するというビジネスモデル。保有している道路は下記の通り。

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上記は2016年度Annual Reportから抜粋。現在16の有料道路資産を保有している。各資産について持分比率は異なる。各有料道路の運営期限は下記の通り。

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一番早く期限が切れるものとしてシドニーのあるニューサウスウェールズ州の有料道路がある。更新の可能性もあるため必ずしも期限が来たら収入がなくなるわけではない。基本的に多くの資産で今後30年以上は運営権を保持することになる。

会計年度は7月~6月。2016年6月期の売上は約22億豪ドル(約1870億円:AUD/JPY=85) 。純利益は9900万豪ドル(約84億円)。

株価はグーグルファイナンスで確認できる。IR情報は同社ホームページより確認できる。

財務諸表分析

Annual Reportより筆者が過去のデータをまとめた。これまで過去10年間のデータを集めていたが、なぜか2008年以前のデータが無かったので、2009年からのデータを示す。

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莫大な資本を投入し、通行料で少しずつ回収するというビジネスモデルなので、投下資本利益率は低くなっている。

2016年6月30日のバランスシートは以下の通り。

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総資産に占める有利子負債は55%。不動産業と同じく、最初に大きな資本がいるため負債を活用することになる。しかし、通行料は安定的に得ることができるので、莫大な有利子負債があっても問題ないだろう。

キャッシュフローの推移は以下の通り。

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2015年、2016年は新規で有料道路資産を購入したため、大幅な投資CFのマイナスとなっている。基本的に現在は成長ステージで投資CFがマイナス、財務CFがプラスという状態が続くとみられる。個人的には投資CFが営業CFの枠内に収まる状態が続くと安心して投資できるが、収益は安定しているのでそこまで問題視することもないと思われる。

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

特に高収益というわけではないが、政府に認可された料金で通行料を徴収するというビジネスモデル。

【競合企業の新規参入】

Transurban社が保有する道路と同じようなルートに、別の有料道路や無料の道路が建設されるリスクはある。しかし、道路建設は政府や地元コミュニティとの折衝が必要で、通行量があまりにも多くなり渋滞が慢性化するという理由以外で、別の道路を建設するということは考えにくい。しかしリスクはゼロではない。

【無形資産】

政府から認可された有料道路運営権が最大の資産。これが安定収益の柱となる。

【スイッチングコスト】

ドライバーが有料道路以外を選択することもあり得る。よってスイッチングコストは高いとはいえない。

【ネットワーク効果】

なし。

【コスト優位性】

基本的に道路は無料。よってコストの優位性は無い。わざわざ有料道路に乗ってでも目的地に着きたいというニーズと、通行料との兼ね合いとなる

【まとめ】

政府から運営権を獲得し、通行車両から通行料を得ているという単純なビジネスモデル。有料道路を用いる交通量が増えることで収益を増やすことができる。

最近の状況

2015年にアメリカワシントンDC近郊の有料道路、そして2016年にシドニーのエアポートリンクという有料道路を取得。また、テクノロジーを用いて請求業務を簡素化するといった取り組みも行っている。

リスク

政府による運営権取り消しと、通行量の減少がリスクである。全社は、よほどのことが無い限り発生しないが、通行量についてはリスク要因となる。オーストラリア・アメリカともに人口が増えており、通行量が減ることは考えにくい。しかし、今後自動運転が世の中に普及してくると、これまでの道路交通の在り方が劇的に変化する可能性もある。現時点で具体的に予想することはできないが、常に認識する必要はあるだろう。

今後の展開

下記の表の通り今後も複数の有料道路の取得計画がある。(2016年8月の投資家向け説明資料より)。近い将来も積極的に資産の獲得を行う予定である。

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過去の株式バリュエーション

過去の株価と一株あたり利益、PER等をまとめた。

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株価は順調に上がっている。一株当たり配当金も8年前の2倍と、投資家に安定的に還元している。

現在の配当利回りは4.5%程度。有料道路を取得し続け、会社規模が拡大すれば今後も配当金の伸びを期待できる。しかし、過去に投資CFが巨額に上っているため、配当金を抑える可能性もある。逆に配当金を減らすと株価に直撃することから、経営陣が配当金を削減するという選択肢を取るとは考えにくいが、リスクとしては可能性は低くない。

分析を終えて

日本でいうNEXCO各社と全く同じビジネスモデルです。非常に安定した収益を得ることができるため、投資家への配当金も安定して伸びています。安定収入を得たい投資家にはかなりおすすめの銘柄になります。しかし、上記にも記載した通り、自動運転が与えるインパクトが全く読み切れません。この銘柄に投資したあとは、常に自動運転とそれが及ぼす社会的影響を注視し、有料道路ビジネスにとって脅威となるのならすぐに売却する、という臨機応変な対応が必要になると思います。もちろん、この銘柄に限らず株式投資すべてに当てはまる話ではありますが。

【銘柄分析】Transurban(TCL)〔2016年6月期〕」への2件のフィードバック

  1. まぬか

    >日本企業は世界一厳しい環境下でサービス競争しているので、収益性が低くなる(株主の取り分も少なくなる)のは仕方がないかなとも思いました

    一生懸命に働いているのに最低賃金は安く、しかも株主の収益性も低い日本とは、なんて理不尽なのだろうと思いました。ブラック企業の記事なんて読むと、背筋がぞっとします。
    働いても、働いても豊かにならない・・・
    でも、働かざるを得ない状況。働けるだけでもありがたい状況。状況は改善するのでしょうか。

    (追記)前回、自分の名前を間違えて「まゆか」と表記してしまいました。失礼しました。正確には「まぬか」です。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      まぬかさん

      日本は暮らす分には申し分ないのですが、労働者として働くのはきつい国ですよね。
      サービス過剰というか、あとは儒教の影響か大手企業だと特に年功序列が強すぎて生きにくいですよね・・。
      ベンチャー企業はそうでもないのかもしれないですが。。

      オーストラリアで資本を形成して、その資本収益でもって日本でのんびり暮らすことを夢見ながら、オーストラリア株の運用を頑張りたいと思います(笑)。

      返信

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