【銘柄分析】Australia Securities Exchange(ASX)〔2016年6月期〕

今回はオーストラリアの証券取引所、Australian Securities Exchange (ASX)を紹介します。日本の日本取引所グループと同じく、自社が運営している証券取引所(ASX)に自社株を上場しています。

会社概要

ASXはオーストラリアのシドニーに拠点を置く、証券取引所である。上場されている株式その他の証券取引・決済による手数料と、事業会社がASXに上場する際の手数料などが、売上となる。株式だけでなく、各種デリバティブ取引も扱っている。

ASXの起源は19世紀オーストラリアがまだ植民地だった頃シドニーにあった取引所である。1987年に会社組織になった。2006年にSydney Futures Exchangeと合併し、現在に至る。

ASXは2016年6月時点では世界の証券取引所の時価総額トップ10に入っており、上場企業数は2204社である。

株価はグーグルファイナンスで確認できる。IR情報は同社ホームページより確認できる。

財務諸表分析

Annual Reportより筆者が過去のデータをまとめた。

取引所のビジネスは、証券の売買のマッチングで手数料を得る、というものであるから、大きな資本投資をせずに売上を伸ばすことができる。これにより、ASXは利益率が非常に高い。

取引手数料ビジネスなので、2008年から2009年のリーマンショック時には売上を大幅に落としている。しかし、固定費が大きくかかるビジネスではないので、売上が大幅に減少しても、引き続き高い利益率を維持できている。

2016年6月30日のバランスシートは以下の通り。

有利子負債はゼロ。バランスシートの大半を現金およびのれんで占めており、また負債についてもほとんどが取引時に顧客から払い込みされた取引き手数料の前受金である。

キャッシュフローの推移は以下の通り。

コンスタントに営業キャッシュフローを確保している。非常に安定したビジネスといえる。

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

取引所という、ネットワーク効果により独占しやすいビジネスモデルが高収益の要因でる。

【競合企業の新規参入】

  • 競合他社がオーストラリアの証券取引所のビジネスに参加することは、今更困難である。政府から認可の取得も難しいし、そもそも認可を取得できたとしても、取引参加者が少ない新規の取引所にわざわざ資金調達のために上場する企業があるか、というと非常に疑問である。

【無形資産】

政府から受けた証券取引所としての認可および、オーストラリアの証券取引市場のシェア89%を占める歴史的経緯および実績が大きな無形資産といえる。オーストラリアでの証券取引といえば、ASX以外は思い浮かばない。

【スイッチングコスト】

  • 「株式をASXで上場する」こと以外で資金調達ができる(クラウドファンディングなど)場合は、ASXにとって資金調達支援サービスの競合となる。現時点ではオーストラリア企業のエクイティファイナンスの方法としてはASX上場が有力な手段ではある。
  • ASXではなく、NYSEやシンガポール証券取引所など他国の証券取引所で上場される場合も考えられる。しかし、現時点ではオーストラリア企業は、ASXに上場し、他国の証券取引所での上場は(二重上場やADRの上場はあっても)例外的である。

【ネットワーク効果】

上場企業が多ければ多いほど、投資家も集まるし、投資家が集まれば集まるほど、その取引所の上場したいという企業が増える。典型的なネットワーク効果が得られるビジネスモデルで、新規参入と競合取引所へのスイッチングを防ぐことが容易である。

【コスト優位性】

取引きの数が多いため、ASX以外の取引所と比較すると決済にかかるコスト優位性が多少はある可能性があるが、基本的にコストにおいて競合と優位性があるとはいえない。

【まとめ】

オーストラリア最大の証券取引所という経緯により、投資家・企業ともASXを取引所として選択し続けるであろう。

最近の状況

2016年6月期において、ニュージーランドの上場企業も、ASXに上場しやすくなる認可をニュージーランド政府から得ている。また、金利スワップなどのデリバティブ商品も多数上場しており、取扱商品の幅を広げようとしている。

リスク

  • リーマンショック級の金融不安により、証券取引量が減ると、ASXの売上・利益は減少する。しかし、2009年時もしっかりと利益はあげており、配当金も出しているため、「配当金が多少減る」という程度のリスクである。(配当金が減るだけでも十分リスクだが)
  • クラウドファンディングなど、取引所というスキームを使わない形でのエクイティファイナンスが増えてきた場合は、ASXの売上が落ちる要因となるが、近い未来において、取引所を介さない資金調達が爆発的に普及することは考えにくい。また、オーストラリアの企業が他国の証券取引所に上場することがより一般的になる、ということも考えにくい。
  • オーストラリアでの証券取引の規制が変更され、システム改修に多きなコストがかかる。
  • システムトラブルにより、取引が決済できなくなる。また、長期間続くことで、信用を失い、他の証券取引所に投資家・企業が移ってしまう。

今後の展開

ASXによると、今後は下記3点を進めるとのこと。オーストラリアという政治体制・法律・社会が整った先進国の有力な取引所ということで、アジア企業の上場が進めば、より成長することができると考えられる。もちろん、簡単なことではなく今後のASXの戦略策定・実行がうまくいけばの話ではある。

  • 公債・公債の取り扱いを増やす
  • 取引のマッチングをより円滑にする技術(ビットコインに利用されているブロックチェーンなど)も活用すべく検討する。
  • アジアのタイムゾーンにおける主要な取引所になるよう、他国企業のASX上場を増やすよう取り組む。

過去の株式バリュエーション

過去の株価と一株あたり利益、PER等をまとめた。

ほぼ独占企業ということもあり、PERは20倍超えと高めである。リーマンショック時に売上・利益が減り、支払配当金が減ってしまったが基本的に安定的に配当金を支払っている。

分析を終えて

過去の数値を分析してみるとASX上場企業の中でも非常に利益率の高くかつ安定した企業であることが分かります。REAと同じくマッチングビジネスは、ネットワーク効果により競合他社を寄せ付けない独占的な地位を築きやすく、かつビジネスに大きな資本が必要としていないので、高い利益率を安定的に継続することができます。

オーストラリアは今後も人口も増え、証券取引も増えるでしょうから、長期的に見ればASXへの投資は安定的な配当金も相まって、十分報われると思います。もっと株価が下がって2010年の時のように、配当利率が6%を超えたら、投資しようかな、と思います。今は少々株価が高すぎて手が出せないのが残念です。

【銘柄分析】Australia Securities Exchange(ASX)〔2016年6月期〕」への11件のフィードバック

  1. デイちゃん

    ありがとうございます。

    取引所はいくつか上場してるんですが、ある種インフラ的な感じで運営は安定してるでしょうし、配当利回りも高めですね。
    ASXは結局投資することはなかったんですが、チャンスがあれば投資してみたいです。有名なので?、日本の証券会社でも扱いはありました。

    ちなみに、日本の証券取引所は、(株)日本取引所グループが東証に上場していて、3月末でクオカード3000円もらえるので、配当+優待の利回りが4.5%くらいになるので、結構人気があります。(たぶん)

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      デイちゃんさん

      おっしゃる通り、証券取引の決済機能を社会に提供している、インフラ企業ということができますね。
      日本取引所グループ、そんなに配当利回りがあるんですか!低金利の日本で、そんなに高い利率は珍しいですね・・・!

      ASXへの投資(ASXという会社自体もそうですし、ASX上場企業もそうです)、ぜひチャレンジしてみてください!
      ASX投資における全般的なリスクとしては、今後もしまたコモディティ価格が上がると、オーストラリアが好景気⇒金利上昇⇒株価下落・・・
      ということが挙げられます。とはいえ、未来のことはわかりません、こつこつ投資するしかないかな~と思います。

      返信
      1. デイちゃん

        返信どうもです。
        今、資産が約1億9000万円くらいで、ほとんど外債なんですが、年に利金が税引き後で約600万円くらい入ってきます。
        で、日本だと相続税が高いので、このままだと相続の際に半分くらい税金で取られちゃう。
        なので、あんまし増やさなくてもいいのかな・・と思っています。
        オーストラリアは相続税はどうなってるんでしょうか。

        返信
        1. ディンゴ 投稿作成者

          デイちゃんさん
          返信が遅れてしまってごめんなさい。
          それだけあれば、働かなくても自由に暮らしていけますね!私もそれを目指したいです!とはいえいまの会社に不満はないのですぐには辞めないと思いますが。
          オーストラリアは相続税無しですね。シンガポール・ニュージーランドも相続税がない(はず)なので、よく日本の富裕層が相続対策で移住していると聞きます。同じアジア文化圏ということでシンガポールのほうが人気みたいですが、オーストラリアも住みよいとは思っています。

          返信
          1. デイちゃん

            げげ~っ!そうなんですか!!
            オーストラリアは相続税がないって、うっすらと聞いてたんですが・・・。
            税金が高いと、投資してお金を増やそうという意欲がなくなりますからね。
            移住するのは難しいでしょうけど、オーストラリア、魅力的ですね。

  2. Max

    ディンゴさん

    初めまして。今オーストラリアへの投資を考えている超初心者の私です。すごく初歩的な質問で恥ずかしいのですが、FXと株式投資 初めて行うにはどちらが良いでしょうか?やネットの情報など多すぎて決めかねています。平均して経済が安定しているオーストラリアへの投資には興味があり、今回偶然にディンゴさんのサイトを拝見しコメントさせて頂きました。回答して頂ければ幸いです。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      Maxさん

      コメントありがとうございます。個人的にはFXはギャンブルだと思っています。長期的な予測はできるかもしれませんが、短期の為替の予測は不可能と思っています。
      やはり株式投資ではないかなと思います。オーストラリア株の中でも私が紹介しているASXやインフラ株は配当が確実に入ってくるので投資先として有望ではないかなと思います。
      株式投資だけでなく、オーストラリア国債への投資も選択肢としてあります。政府がバックについているのもあり、こちらのほうが確実性が高いです。
      当然、その分リターンは低くなってしまいますが・・・。
      日本からだと投資信託やみずほ証券などでオーストラリア株に投資できると思います。

      返信
      1. Max

        返信ありがとうございます。そうですね、株式投資をしている友人にもFXは一寸先は闇だと言われてしまいました。まだ株について色々勉強している所なので実際の取引はもう少し先になるかもしれません。友人にはリアルトレードで得ることのほうが多いよ、と言われていますが。。。
        ディンゴさんのブログは非常に解りやすく的を得ているのでこれから過去ログをじっくり拝見して参考にしたいと思います。
        これからもディンゴさんの更新を楽しみにしていますので頑張ってください!

        返信
  3. しげ

    ディンゴさま

    初めまして。
    シドニー在住半年の30代男性です。

    オーストラリア株の貴重な情報ありがとうございます。非常に勉強になります。
    なお最近テレストラを購入し、今度も随時色々追加して行こうと考えております。
    確定申告やら帰国の際にどうなるか疑問ですが笑

    今度も宜しくお願いします。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      しげさん

      初めまして。コメントありがとうございます。
      なかなか更新できませんが、これからもコツコツと銘柄をご紹介したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
      ところで、もし日本の居住者でなければ確定申告は不要となるはずです。住民票は既に国外に移していますか?
      であれば配当金や譲渡益について確定申告はしなくていいと思います。もちろん、税理士の先生にご確認ください。

      返信
  4. しげ

    ディンゴさま

    いえいえ、英語下手くそなので大変助かります。

    日本には現在、住民票はありません。
    日本の証券口座は凍結扱いにしてもらっています。

    オーストラリアの証券口座に株を残したまま、帰国する予定なので、将来どうなるのかなーと思っている次第です。

    返信

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