【銘柄分析】Computershare (CPU)〔2016年6月期〕

今回は、株式事務代行会社の世界大手、Computershareを紹介します。ASXだけでなく世界中の多くの市場における株式事務代行ビジネスにおいて高いマーケットシェアを占めています。

ASXで株を買ったら、Computershare社から手紙が届き、配当金等の取り扱いを登録することになります。基本的に郵送ではなく、インターネット上にあるComputershareのポータルサイトで情報を登録することになります。(郵送でもいいですけどネットのほうが便利なので私はネット上で登録しています。)ASX銘柄を売買したことがある人はなじみのある会社ではないかと思います。日本では同様のサービスは信託銀行が行っているようですね。

会社概要

Computershare(CPU)は1978年オーストラリアのメルボルンで創業。創業後しばらくはオーストラリアで株式事務代行ビジネスを行っていたが、1997年のニュージーランドを皮切りにアメリカ・イギリスなどの他国の株式市場における株式事務代行会社を次々と買収し、世界展開を図ってきた。

現在のCPUの主なビジネスは次の4つである。

1.株式事務代行:上場会社の株式事務サービスの提供(上場会社は株式が不特定多数の投資家間で売買・保有されるため株式名簿管理・株式名義書書換を迅速に行う必要がある)

現在のCPUの株式事務代行ビジネスの活動範囲は下記の図の通り。アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドで株式代行ビジネスのマーケットシェア1位・イギリス・香港・欧州諸国でマーケットシェア2位を誇っている。

2.ビジネスサービス:債券に関する事務手続きの代行・倒産時の事務代行などの各種事務サービスの提供

3.従業員持株制度:従業員へのストックオプション付与などの制度設計・実務における各種サービスの提供

4.コーポレーションアクション事務代行:株式分割・減資・M&A等の事務サービスの提供

CPUが提供するサービスの多くは、資本主義社会の根幹の事務手続きになるため、認可された企業のみ行うことができる「規制ビジネス」である。

CPUは株式や債券に関わるビジネスを行っているが、あくまで手数料のみを得ており、株式市場や債券市場でポジションを取って収益を得ているわけではない。基本的に好景気で株式・債券の取引増えれば増えるほどCPUの売上も上がる。

株価はグーグルファイナンスで確認できる。IR情報は同社ホームページより確認できる。

財務諸表分析

Annual Reportより過去の財務データを集めた。Annual Reportが2011年版までしかCPUのホームページに上がっていなかったので、2010年からの数値をまとめている。

この数年は売上が若干の上向きで推移しているが、税引き後利益が下がり基調である。

2016年6月30日のバランスシートは以下の通り。

総資産のうちの多くは無形固形資産、特に企業買収を繰り返した結果であるのれん代が占めている。総資産のうち有利子負債は約47%で、企業買収のために調達したものである。景気に左右されるとはいえ、安定的なビジネスなので問題ない水準であると言える。

キャッシュフローの推移は以下の通り。

営業キャッシュフローが常に投資キャッシュフローを上回っており、安定的にキャッシュを稼げている。2012年は、ニューヨークメロン銀行の株式事務代行部門を買収したこともあり、投資キャッシュフローが多額になっている。

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

ビジネスモデルは非常に単純で、いわゆる「事務手続き代行」である。

【競合企業の新規参入】

資本主義社会にとって株式取引が円滑に行われることは非常に重要である。株式名簿情報を悪用して勝手に名簿書換を行うことがないよう、CPUが行う株式事務代行などのビジネスは政府により規制を受けている。よって、新規参入は不可能ではないものの、そう簡単にできるものではない。

【無形資産】

政府や証券取引所からの「株式事務代行」「債券事務代行」としての認可されていることが無形資産といえる。

【スイッチングコスト】

一度CPUを事務代行業者として指名すると、株式名簿管理等はすべてCPUが行うことになる。他の会社に替えようとしても、株式名簿等を滞りなく他社に引継ぎするには多大な手間がかかる。よってCPUは一度仕事を取ることが出来れば、高いスイッチングコストより顧客を維持することができるだろう。

【ネットワーク効果】

CPUが事務代行をしているからといって、その銘柄に投資をするわけではない。ネットワーク効果はない。

【コスト優位性】

競合と比べ、CPUがコスト優位性があるかというとそうでもない。競合他社もインターネット等を用いてコスト削減は行っている。

【まとめ】

誰もが簡単には参入できない規制ビジネスであること、そして高いスイッチングコストがCPUの収益の源泉である。大企業ならば多くの不特定多数の投資かに自社株を売買されるので、大量の事務を確実に行ってほしいという点でCPUを選好することはありえる。さらに、株式だけでなく債券事務・従業員持ち株制度などすべてをひとまとめにして仕事を依頼したい場合は豊富なラインナップを持つCPUが選好される可能性がある。

最近の状況

2017年6月期上半期の状況は下記の通り。この1年で売上・利益ともに上昇傾向である。

地理的には売上・利益の多くをオーストラリア国外、特に北米で上げている。また、株式事務手続代行・債券事務代行が主な売上・利益の源泉である。

リスク

資本主義社会に必要不可欠なビジネスではあるものの、下記のようなリスクが考えられる。

  • 不祥事などによる許認可の失効。
  • ブロックチェーンなどの技術の進展で、外部機関に頼まずとも上場企業が簡単に株主名簿を作成できるようになるなど、CPUが提供するサービスの価値が低下する。

今後の展開

CPUは今後の成長分野として債券事務代行や従業員持ち株制度の事務代行ビジネスを伸ばしていくとしている。オーガニック成長のみならず買収を通じてこれらの成長を図ると思われる。

さらに最も重要なのはアメリカをはじめとした今後の政策金利の上昇である。CPUは決済のために顧客等から一時金に預かる形になるため、金利が高いほど、金利収入が増えることになる。

2017年6月期上半期は166億米㌦ものクレジットバランスにより、6600万米ドルもの収入を得たことになる。

過去数年間は低金利だったが、今後金利が上昇するとこの金利収入も増えることになる。

CPU自身も上記の投資家向け資料で「向かい風から追い風になっている」と金利上昇から恩恵を受け始めることを明確に述べている。

過去の株式バリュエーション

過去の株価と一株あたり利益、PER等をまとめた。株価は過去8年あまりずっとフラットだが、2017年7月14日現在は14.91ドルと過去10年で最高値近辺の株価をつけている。金利上昇を期待した買いが先行しているのではと思われる。

分析を終えて

個人的にはCPUのような社会に絶対に必要かつ単純なビジネスモデルの企業が好きです。日本では株式事務代行ビジネスは信託銀行などの一部門が行っており、あまり注目されるようなビジネスでもありませんが、オーストラリアではComputershareは世界最大手の会社ということで有名ではあります。

今は株価が上がって配当利回りが下がってしまいましたが、今後も安定的にキャッシュを生み出すのは間違いないと思います。個人的には株価がもう少し下がれば買ってみてもいいのですが、今はちょっと高すぎるので様子を見たいと思います。

ただし、ASXが現在のCHESSシステムという株式取引記録のシステムを廃止し、時期は未定ですが新たにブロックチェーン技術を使ったシステムを導入すると発表しています。CPUにとってこれがビジネス機会となるのか、脅威となるのかまだよくわかりません。更にAIの発展で、株式や債券の事務手続きはCPUよりもよほど安く行う競合企業・競合ソフトウェアが出てくるかもしれません。まずはCHESSシステムの廃止・新システムの導入でCPUがどのような影響を受けるのか、注視したいと思います。

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