オーストラリアの年金制度とASX企業の配当性向

最近は追加購入する現金もないし、特に購入したい株もないのでアマゾンで本を買って読書していました。送料は高いですが、オーストラリアからでもアマゾンで本を買えるので個人的には大変助かっています。

せっかくオーストラリアに住んでいるにも関わらず、私は実はアウトドアといった外での趣味は苦手です。休日はどちらかというと家でネットしたり本を読んでいたりします。とはいえ夏場にはよくビーチに行っています。でも海少し泳いだ後は、ビーチで本を読んでばっかりですね。ビーチで読書もけっこう贅沢だと思いますが。

さて、今回は古い本ですがドラッカーの「見えざる革命」という本の内容が面白かったので紹介したいと思います。

ドラッカーといえば日本で人気の経営学者・経済学者で、もはや説明は不要かと思います。ドラッカーはこの「見えざる革命」という本でアメリカの年金制度とその社会的な意味について記載しています。内容を非常にまとめると下記の通りです。

  1. アメリカでは、労働者は年金を積み立て、企業年金基金がこれを運用している。年金制度は1950年代のGMで導入された企業年金制度が基となっている。
  2. 年金基金は、預かった年金のうち一部をアメリカの株式市場で運用をしている。
  3. 結果的に全産業の株式資本の少なくとも5割が、企業年金基金が保有することとなった。つまり、労働者が年金基金を通じて、企業の「所有者」つまり資本家となった。労働者による生産手段の所有は、マルクスが「革命により実現する」としていたが、皮肉にも資本主義国アメリカで、特に革命が起きる訳でもなく「企業年金」により労働者による生産手段の所有が実現した。(これが見えざる革命)

企業年金の社会での意味を明確に記述しており、大変面白かったです。さらに興味深いのは、企業年金制度を整備したGMの考え方でした。

GMは、年金を退職者に支給するには、確定利付債だけで運用したのではとうてい足りないと考えました。そこで下記のような原則を示します。

  1. 生産手段への貸付ではなく、生産手段に対する所有権に基礎を置く。(つまり年金は株式で運用)
  2. 特定の企業ではなく、アメリカという国全体の所有権を持つ。(自社株には投資しない)
  3. 専門家が運用し、今後成長する企業に投資する。

以上の原則のもと、GM以外のアメリカの数々の企業年金が運用されていき、結果として株式市場で大きな影響力をもつようになっていきました。

どの企業・業界でも調子がいいのは1世代30年くらいで、その後は躓く場合が多いです。よって、自社株で年金を運用すると、その企業の業績が悪化したら年金資産も減ってしまうことになります。年金を受給する30年後まで自社の業績が右肩上がりが続くと期待するのは無理があります。

一方で、その時々の成長産業に適切に投資できれば年金基金は順調に増えていきますので労働者の年金が増えることになります。マクロで見ると、生産性の低い産業から生産性の高い産業に資本が柔軟に移転することが出来るので、アメリカ全体としても資本を有効に活用できるということになります。GMが示した年金運用の原則というのは本当に理にかなった、よく考えられた方法であったと思います。

日本の企業年金でも「自社株に投資する」「確実な社債だけ運用する」といった、様々な方針の下運用されていると思いますが、個人的には上記の原則に沿って投資されるべきかなと思います。ただ日本の場合はバブル崩壊後、株価が下がってしまったので、アメリカなど国際分散投資をすべき、ということになろうかと思いますが・・・、

企業年金が株式市場へ与える影響についても本の中で記載がありました。

  1. 今後人口構造が高齢化し、年金の需給者が増えると、企業年金は現金を退職者に支払う必要がある。
  2. 企業年金は、投資先の企業に対しキャピタルゲインよりも、当座の現金、つまり配当を求めるようになる。
  3. 大株主たる企業年金に求められるままに配当を実施すると、結果として成長投資に回す資本が少なくなり資本不足に陥る。

現在のアメリカの企業年金が、アメリカ企業に対し高配当を要求する傾向にあるかどうかは調べていないので不明ですが、退職者が増え、基金からの現金支出が増えだすと現金が必要となるため、理屈の上では上記のドラッカーの言う通りかなと思います。

最近読んだ本の中で大変興味深い内容でした。企業年金の社会的な意味を指摘することはもちろん、高齢化が及ぼす影響までも1976年時点で論じているドラッカーは、やはり天才だなと改めて感じました。

この本を読んだので、オーストラリアの年金基金がASXにどれだけ投資しているか気になったので調べてみました。

ちなみにオーストラリアの年金制度ですが、2階建てになっています。

1階部分は、老齢年金(Aged Pension)です。特に税金を払ってなくても、年金を拠出してなくても支給されます。仕事を引退してから生活が成り立たない老人の生活を保障するという、生活保護のような位置づけです。なので、基準以上の収入や資産がある人には支払われません。(とはいえ何も働かくても老後は老齢年金をもらえるなんて・・・オーストラリアは何て良い国なんでしょう)

2階部分がいわゆるふつうの年金(Superannuation)です。ここオーストラリアでは「スーパー」と呼んでいます。

オーストラリアでは、雇用主は従業員に払う給与のうち、9.5%をその従業員のスーパーの口座に拠出する必要があります。つまり従業員の立場から見ると、自分の給与のうち9.5%が毎年自分のスーパー口座に積み立てられていき、将来退職したらこれまで積み立てたスーパー口座から自分用の年金を受け取ることになります。

オーストラリア政府としては、老齢年金は事実上税金からの支出となるので、なるべく減らしたいと考えています。退職者の生活を維持の根幹となる制度がこのスーパーです。スーパー口座への追加拠出に税の優遇をするなど、政府は労働者が積極的にスーパーに積み立てることを奨励しています。

個人はスーパーの口座に積み立てた資金を自分好みに運用できます(ファンドを購入します)。ASX株への投資、債券への投資、外国株への投資など各個人が様々に運用しています。スーパーの運用はオーストラリアの一大産業であり、多くの金融機関がサービスを提供しています。

以上がオーストラリアの年金制度、特にスーパーの概要です。

 

現制度は1992年に開始しており、開始以来多額の資金がスーパーに拠出されました。2017年6月時点で、2兆3千億豪ドル(195兆円、豪ドル=85円)程度に積みあがっています。

スーパーを運用する投資ファンドの業界団体であるASFA(Association of Superannuation Funds of Australia)が、スーパーの運用先について統計を出しています。ASFAによると、同団体の傘下のファンドがASX上場株式に投資している額は約3500億豪ドルとのことです。

ASXの時価総額がASXのホームページに掲載されています。2017年9月末のASX時価総額は1兆7800億豪ドル(151兆円)程度になっています。

となると、ASXのうちスーパーにより保有されている割合は

3500億/1兆7800億 ≒ 20% 

程度となります。

アメリカほどの保有割合ではないものの、オーストラリアの上場企業のうち、20%という相当な割合が年金基金により保有されていることが分かります。

今後オーストラリアでも高齢化が進み、退職者が増えていきます。ドラッカーの記述に従うと、オーストラリアでも退職者への現金支出に備えるため、スーパーの基金を運用する投資ファンドは、保有するASX上場企業に対し「配当による還元」をより強く要求するのかなあと思います。

以上長くなりましたが、結論としては「ASX上場企業は(多分)今後も配当性向が高い、と思う」です。

私は、将来はオーストラリア株での配当金生活を考えているため、ASX企業には配当性向を高く保ってほしいと思っています。ドラッカーの記述に従うと、今後もASX企業は配当性向は高いままであるという結論が導き出せたので、自分の人生設計はうまく行く!と感じた次第です。

というわけで、まずは1 Millionを達成し、高配当株に投資して悠々自適に暮らすべく株式投資を頑張りたいと思います。あと3倍弱ですね・・・。でも多分退職はしないと思いますが(笑)

物価が安い国で生活するほうが、配当金生活で豊かに暮らすことができます。なので、1Million達成したら日本に帰るかもしれないですね。趣味が読書とインターネットなので、働かないのであれば日本の方が快適ですし(笑)働くとなるとオーストラリアのほうが快適ですが、やはりサラリーマンは自分で意思決定ができないので、たまに職場で「イラッ」とすると配当金生活を夢見てしまいます(笑)

オーストラリアの年金制度とASX企業の配当性向」への11件のフィードバック

  1. ケイ

    こんにちは。オーストラリア在住のケイといいます。とても有益な情報ありがとうございます。
    駐在で来豪し1年ほど経過し生活も落ち着いてきたので投資口座を開設したのですが、オーストラリアの税制を調べてみるとキャピタルゲインは総合課税のようで税率が無茶苦茶高いですね。利益のほぼ半分税金で申告も面倒なイメージがあり踏ん切りがつかず、細々と金利3%の銀行預金を続けています。駐在員なのでSuperは対象外で、ビザの4年期限を目安に帰国または他国へ転勤になる可能性が高いです。
    ディンゴさんは株式投資の税金で工夫されていることはありますか。ぜひ教えてください。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      ケイさん

      こんにちは。
      何方か様からか、いつかこのご質問があると思っていました。ついに回答するときが来たようです(笑)
      実は私はTemporary Visa Holderです。永住権はありません。近いうち日本に帰る予定です。

      更にTemporary Visa Holderは、キャピタルゲイン税がゼロです!!(配当税は総合課税ですが)
      仰る通り総合課税だと税率がめちゃくちゃ高く、株式投資などやってられません。

      昔オーストラリアに来たばかりの時、株式投資をやろうとしたとき、会計士に「配当税はどうなるのですか」と質問し
      「え、あなたは457ビザホルダーなのでCapital Gain Taxはゼロですよ」と言われた時の衝撃は忘れられません。
      同僚の中華系の人も「知り合いにはわざと永住権を取っていないやつがいる」とも言ってましたよ(笑)

      私は株式投資というよりかは、そのうち日本に帰ることが確定していたので457ビザを延長しただけで、永住権は取りませんでした。
      私の場合は来年あたり日本に帰る予定です。いろいろ事情があるのですが、オーストラリアは私にとって永住の地ではありません。

      ケイさんも駐在員ということであれば457ビザホルダーでは?となるとキャピタルゲイン税はゼロなので、ご心配には及ばないかと思います。
      会計士に確認して頂けたらと思います。

      返信
  2. ケイ

    ケイです。さっそくありがとうございます。
    Temporary Visaはキャピタルゲイン税がゼロなんですね。ほんとに衝撃です。
    457ビザですが、temporary Visaだとオージーが無料で通う公立小学校に通うのに5000ドル以上の学費を払わされたり(会社に負担してもらってますが)と外国人には厳しい国ですが、こんなメリットがあったのですね。
    総合課税の累進税率きつすぎなので妻の名義で口座を作ろうかとかあやしいことを考えていたのですが、いっきに心配事が解消しました。感謝感謝です!

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      ケイさん

      人によりルールが異なるかも、念のため会計士に確認してください。
      Temporary Visa Holderでも、不動産売買にかかわる譲渡益は課税対象ですが、株式は課税対象外のはずです。
      ケイさんにもオーストラリア株の魅力をご認識していただけたようですね(笑)

      私は来年あたり帰国したら、日本で20%の譲渡益がかかります。確定申告して支払うことになると思いますが
      利益は豪ドル、支払は円、どうしようかな~と考えています。

      返信
  3. HB

    会計士によって解釈が異なるのかもしれませんが、
    税法上は6ヶ月以上滞在すると居住者の扱いになるのではないかと思います。
    私もTemporary Visa Holderですが、税務上は居住者として扱われており、
    株式取引も課税対象となっており納税しております(もちろん総合課税です)。
    ただ、ご指摘の通り同じ457でも条件によって違うのかもしれませんね。。。
    信頼できる会計士の方が仰っているようでしたら問題ないのですが・・・。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      HBさん

      一応4大会計事務所のパートナーサイン入りで税務の支払いをしているので問題ないのかなとおもいます(大きいところがいいというわけではありませんが・・・)
      配当金は課税されますがキャピタルゲイン税の課税は不動産取引等”taxable Australian property”に限られるとのことでした。

      ちょっと気になったので調べてみました。
      ATOのHPより。「キャピタルゲイン税の課税はtaxable Australian propertyの売買に適用される」
      “If you’re a temporary resident, foreign resident or the trustee of a foreign trust, you’re subject to capital gains tax (CGT) if a CGT event happens to a CGT asset that is taxable Australian property, such as real property in Australia or a CGT asset you use in a business in Australia.”

      https://www.ato.gov.au/General/Capital-gains-tax/International-issues/Foreign-residents-and-temporary-residents/#Whatisatemporaryresident

      Taxable Australian Propatyとは、オーストラリアの不動産・鉱業権等・・・(株は含まれず)

      Taxable Australian property includes:

      a direct interest in real property situated in Australia
      a mining, quarrying or prospecting right to minerals, petroleum or quarry materials situated in Australia
      a capital gains tax (CGT) asset that you have used at any time in carrying on a business through a permanent establishment in Australia
      an indirect interest in Australian real property – you and your associates hold 10% or more of an entity, including a foreign entity, and the value of your interest is principally attributable to Australian real property.
      Taxable Australian property also includes an option or right over one of the above.

      https://www.ato.gov.au/general/capital-gains-tax/international-issues/taxable-australian-property/

      更にグーグルで出てきた会計事務所の文書でも、下記のような内容があります。ATOと違ってより直接的に”only”と記載があります。

      Temporary residents
      If you are a temporary resident, you are only subject to CGT on the disposal of ‘Taxable Australian Property’ (ie:
      real property amongst other items

      http://www.marmic.com.au/static/uploads/files/tax-guide-to-australia-wfjjuvefjpre.pdf

      457ホルダーはMigration Act 1958に基づくtemporary visa の所有者ですので、株式のキャピタルゲイン税は非課税のはずですが、総合課税で納税している場合は税還付を会計士に依頼すべきではないでしょうか?
      (もしくは間違ったアドバイスで余計に納税した分の返金を会計士に求めるなど)

      いずれにせよ、会計士と確認する必要があると思います。私は数年前から非課税状態ですが指摘を受けたことはありません。

      返信
  4. HB

    経過報告です。。

    先日は丁寧なアドバイスをいただきありがとうございました。その後、色々な方にお話を伺っているところですが、そもそもビザ上のtemporary resident(非居住者)とTax上の非居住者が異なる場合がある、というところがややこしいですね。

    If you are visiting Australia, working and living in the one location and have taken steps to make Australia your home. に該当すれば居住者として扱われるそうです。457でビザ状はテンポラリーであっても、一箇所から6ヶ月以上給与を受け取っていて(457である以上、普通はそうですからね・・・)、かつ永住する意思を示しているとやはり税金上は居住者として扱われそうです。

    私の場合は、まだすでに永住権の申請をしているので(まだ降りていませんが)残念ながら難しいかもしれません。・・・が、諦めずにもう少し色々な会計士にセカンドオピニオンを求めてみようと思います。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      HBさん

      なるほど、「永住する意思」があると税務上の居住者として扱われるのですね。
      それは知らなかったです・・・。お教えいただき有難うございます。
      私の場合は「永住する意思」が無いし、永住権に向けた手続きを踏んでいないので、税務上の非居住者として扱われているのかもしれません。

      是非セカンドオピニオンを求めていただき、なるべく非課税になることを祈っています!

      返信
  5. ナポリタン

    こんにちは。 オーストラリア税対策は私も前から気になっていました。私は永住権保持者なので、皆さんが仰るように総合課税です。ただし、1年以上保有した株に対するキャピタルゲインは税率が半分になると理解しております。

    ディンゴさん、オーストラリアの株情報はどのように入手されていますか? おすすめの新聞等あれば教えてください。

    返信
    1. ディンゴ 投稿作成者

      ナポリタンさん

      仰る通り1年以上保有したらキャピタルゲイン課税は半分になると聞いています。「私もそうですよね」と聞いた際に
      「え、あなたは配当には課税されるけどキャピタルゲインは課税ゼロですよ」と言われてビックリしました。

      オーストラリアの株情報は、主にAustralian Financial Review紙から情報を拾っています。
      The Australianのビジネス欄も見ていますね。つまり、一般的な情報源です。

      返信

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