【銘柄分析】Servcorp (SRV)〔2017年6月期〕

今回はサービスオフィス事業の大手Servcorpを紹介します。

従来、個人や少人数で事業を起こす場合は、自宅もしくは小さな雑居ビルを事務所にしており、都心の大規模ビルは大手企業が使うことがふつうでした。しかし、都心の大規模オフィスビルの机一つ分だけ借り、イニシャルコストを抑えつつITや秘書サービスを受けられる「サービスオフィス」事業が近年広がりつつあります。

インターネットが普及し、個人や少人数でも事業を行いやすい環境になっています。自宅で一人で仕事をできないこともないですが、孤独に耐えらないことも多いと聞きます。そういうときは、サービスオフィスやコワーキングスペースで仕事をし、同じく一人で事業を行う人と交流を持つことで、人と関わりをもちつつ、快適なオフィス環境で仕事を行うことができます。

私はサラリーマンなのでサービスオフィスやコワーキングスペースを使ったことがありませんが、知り合いで”一人事業”を行っている人がシドニー都心のコワーキングスペース(Servcorpではありませんが)で仕事をしていて、そこで打ち合わせをしたことがあります。かなり快適そうでした。今後も広がるのかな・・と思います。

会社概要

1978年オーストラリアにて創業。1999年にASXに上場。ティッカーコードはSRV。

1976年の創業者のモーフォレッジ氏が別のビジネスを始めた際、オフィススペースや秘書サービスなどの間接費が高く、利益を食っていることに気づき「オフィスの一部をシェア」して利益を捻出したことが「サービスオフィス」事業開始のきっかけになったとのこと。

その後1978年にシドニーのオフィスビルで、サービスオフィス事業を開始し、2017年現在では世界23か国、54都市に160か所もの拠点を持つレンタルオフィス業界の大手企業となった。日本には1999年に進出している。

2017年6月期の売上は3億3,000万豪ドル(約290億円、豪ドル=88円)、純利益が4,100万豪ドル(約36億円)となっている。時価総額は2018年1月22日現在で5億6500万豪ドル(497億円)

株価はグーグルファイナンスで確認できる。IR情報は同社ホームページより確認できる。

財務諸表分析

Annual Reportより過去の財務データをまとめた。

リーマンショック後の世界的な景気悪化により2010年・2011年に売上、利益が激減しているが、2012年から徐々に回復している。

2017年6月30日のバランスシートは以下の通り。

有利子負債がゼロで、財務状態は極めて良好である。

キャッシュフローの推移は以下の通り。

リーマンショック後の2010年と2011年はフリーキャッシュフローがマイナスだが、その他の年度はプラスとなっており、資金繰りは問題ない。

ビジネスモデル分析(高収益の要因)

ビジネスモデルは「好立地のオフィスを借り」「細かく分けてテナント(主にスモールビジネス)に貸す」」という卸売業と似ている。部屋貸しだけでなく、秘書サービス・ITインフラなどが整備されているので、Servcorpのオフィスを借りれば、中小企業も快適な環境で事業を行うことができる。

【競合企業の新規参入】

特に参入が難しい業態ではない。競合企業の新規参入は避けられない。WeworkやRegusといった競合が次々と市場に参入している。

【無形資産】

特にこれといってない。業界の大手ということでのブランドや信頼はあるが、高収益を得られる要因ではない。

【スイッチングコスト】

一度Servcorpのオフィスに入居したテナントにとって、別のオフィスに引っ越すのは面倒ではあるが、引っ越しはそこまで大変ではない。スイッチングコストは低いといえる。ただし下記記載のように若干のネットワーク効果はあるかもしれない。

【ネットワーク効果】

Servcorpに入居したテナント同士で交流できるコミュニティイベントを実施している。Servcorpのサービスオフィスに入居しているからこそ、他の入居者と交流することができる。入居者が増えれば増えるほど、多くの起業家などと交流するチャンスが生まれる可能性があるため、「Servcorpの入居者が増えるほどServcorpのオフィスに入居する価値が上がる=ネットワーク効果」による入居者の引き留めが出来る可能性がある。

また、世界中のServcorpオフィスを使うことができるので、一か所しか運営していないサービスオフィスよりもServcorpのほうが魅力的に感じる入居者も居るかもしれない。

ただし、マイクロソフトや証券取引所のような強力なネットワーク効果は無く、顧客にとって若干スイッチングコストが上がるくらいかと思われる。

【コスト優位性】

競合と比べ、Servcorpのほうがコストが安いことは考えにくい。

【まとめ】

一流オフィスと付随するサービスを小分けにして、比較的小規模な企業や個人に提供する、ということで特に競合と差別化できるビジネスモデルではない。

最近の状況

創業以来オーストラリアだけでなく世界中に進出している。

2017年6月期の業績資料によると、アジアでの売上および利益率が最も高く、一方でアメリカ事業が赤字となっている。ServcorpのCOOがアメリカに拠点を移し、てこ入れを行っているとのこと。

リスク

Weworkといった競合企業が次々と現れているため、Servcorpに入居している企業・個人が競合他社に移る可能性はある。Servcorp自身も「競争が激しい市場」と述べている。

今後の展開

2018年度は、新規のオフィスを積み上げるのではなく、既存のオフィスの稼働率を上げる。

中長期的にはITシステムへの投資や、立地のよいオフィスの提供などを上げている。(個人的には、競合他社と明確に差別化できる要因はないもと思われる)

過去の株式バリュエーション

過去の株価と一株あたり利益、PER等をまとめた。

リーマンショック後は安定的に配当を増やしている。

分析を終えて

20世紀は大企業が経済をけん引する時代であったと言われています。(統計をとったら違うのかもしれませんが)個人ではなく、組織の力でレバレッジをかけてビジネスをしたほうが効率的に成果を残せた時代であったと言えます。

21世紀はインターネットの発展で、個人もしくは少人数でビジネスを行った方が効率的な時代に移りつつあるかもしれません。組織には必ずしがらみがあり、しなくてもいい仕事・報告をする必要がありますが、その代り組織というレバレッジを使えます。ただ、今の時代がインターネットというとんでもないレバレッジを利用することができます。ふつうの人がブログを書くだけで、世界中に自分のアイデアを発信できる時代になりました。

結局何が言いたかったかというと、生産性の高い個人が一人・少人数でビジネスを行うことが増えServcorpが提供しているサービスオフィスの需要は増えるのかなと思います。

Servcorpは需要増にうまく乗っていると思いますが・・・競合他社が多数存在するために今後も今と同じような利益率を維持できるかは疑問です。成長産業には多くの企業が参入するので、Servcorpはますます厳しい競争環境に置かれるのではないかと思います。

日本にもServcorpが進出しており、かつ知人がサービスオフィスを使っているので、今回銘柄分析してみました。配当利率4%を超えており魅力的ではありますが、特に差別化要因が無いなかで今後も利益水準を維持できるか・・・。まずは米国事業をどう立て直すのかを確認してから投資するかどうか決めようかなと思います。

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