BHP Billitonの時価総額 (二元上場会社の時価総額について)

ASX上場企業で二元上場会社のBHP Billiton(BHP)の時価総額の計算方法について解説したいと思います。

BHP Billitonの分析記事を書いていて思ったのですが、二元上場会社であるBHP BillitonってどうやってPERを計算して割高割安を確認すればいいのかと困ってしまいました。

BHPBilliton株はASX上場分とロンドン証取の二種類の株式がありますが、当ブログはオーストラリア株を専門にするという趣旨ですので、ASX上場株式(BHP Billiton Limited)について確認してきたいと思います。

 

そもそも二元上場会社とは

グーグルで調べると定義は出てきますが、「二つの上場会社が異なった株主集団をもち、所有権を共有する一体の事業集団を運営する企業構造である」というのが二元上場企業です。

これだと何のことか良く分かりませんが、

  • 二つの会社が一体となって事業を運営する。(2社間にEqualization Agreementなる契約書を締結する)。2社は同一の取締役及び経営陣によってマネジメントされる。
  • 議決権と配当の権利は、両社の株主に対し株数に応じて等しく割り振られる。

ということで、要するにBHP Billitonの場合はASXのBHP Billiton Limited株を1株買うのも、ロンドン証取のBHP Billiton plc株を1株買うのも同じだ、ということです。株主になりたければ、どちらの証券取引所から株を買っても全く同じだよ、ということになります。

二元上場企業という企業形態を採用しているのは、「ロンドン証取」と「別の国の証券取引所」に上場している会社です。BHP Billitonだけでなくオーストラリアの鉱業企業であるRio Tintoなどが二元上場会社となります。石油メジャーのロイヤルダッチシェルは1907年から2004年まで英国とオランダに株式を上場している二元上場会社でした。

企業合併の際に二元上場会社という企業形態を採用するメリットとしては、いくつかあるようです。

  1. キャピタルゲイン税の回避。通常の企業合併のように買収する会社の株式を全部購入する際、被買収会社の株主はキャピタルゲイン税を支払う必要がある。しかし、二元上場企業という形態をとれば、被買収会社の株主は株を売らなくてすむのでキャピタルゲイン税は発生しない。
  2. 国のプライドの問題。被買収会社がその国を代表する企業の場合、通常の合併をすると「わが国の大事な会社が他の国に乗っ取られた!」という世論が巻き起こる可能性がある。二元上場企業であれば企業自体は存続するので上記のような問題は起こらない。
  3. 株式インデックスに組み入れられた企業が被買収企業の場合、その企業の株が全部買われて市場からなくなった場合、一部のインデックスファンドは内規により(買収した会社がインデックスに組み入れられていない場合)買収した会社の株を売らざるを得なくなる可能性がある。二元上場企業であれば合併した元の会社の株は引き続き上場されているので、上記のように投資ファンドによる「内規に則った」売りを避けられる。
  4. 企業合併時に必要な競争法上の規制当局からの認可取得が不要となる可能性がある。

などが挙げられます。その代わり、マネジメントが複雑化する可能性がある、といったデメリットもあります。

 

BHP Billiton Limited(豪)の時価総額

BHP Billitonの豪州株式の時価総額はどうやって求めたらよいのでしょうか?

BHP Billiton 2014年Annual Reportの327ページに下記のような文言があります。

BHP Billiton Limited shareholders and BHP Billiton Plc shareholders have economic and voting interests in the combined BHP Billiton Group. The economic and voting interests represented by a share in one company relative to the economic and voting interests of a share in the other company are determined by reference to a ratio known as the Equalisation Ratio. Presently, the economic and voting interests attached to each BHP Billiton Limited share and each BHP Billiton Plc share are the same, since the Equalisation Ratio is 1:1.

BHP Billiton Limited(豪)の1株とBHP Billiton Plc(英)の1株は同じ議決権、同じ経済的効果(配当金等)があると記載があります。

BHP Billiton Limited(豪)とBHP Billiton Plc(英)の株式発行数は前者が約32億株、後者が約21億株(BHP Billiton 2014年Annual Reportの333ページ参照)です。BHP Billiton Limited(豪)の株価は2015年8月26日現在25.49豪ドルとなっています。ということは、もしBHPBillitonの全株式がASXに上場した場合の時価総額は

〔(BHP Billiton Limitedの株式発行数)+(BHP Billiton Plcの株式発行数)〕×(BHP Billiton Limited株の株価)となります。

8月28日現在のBHP Billiton全体の時価総額の計算結果は以下の通りです。

BHP Billiton Limited market cap

豪・英の株式発行数合計53億4787万6559株×25.49豪ドル=1363億1737万3489豪ドル(円/豪ドル=90円とすると約12兆2686億円)となります。

ということで、一株あたり利益、一株あたり配当金、PER等の指標は上記の考え方で計算することができます。私はこの考え方を分析に用いたいと思います。

株価サイトのBHP Billiton株の時価総額はどう表示されているか?

グーグルファイナンス、ヤフーファイナンス、ブルームバーグでBHP Billiton Limited(豪)の2015年8月28日の株価・時価総額をを見てみます。

グーグルファイナンス

google finance

株価は25.49豪ドル、時価総額は1242.2億豪ドルと記載があります。

続いてヤフーファイナンス

yahoo finance株価は25.49豪ドル、時価総額は1380.9億豪ドルとなっています。時価総額がグーグルファイナンスの数値と違っています…。

では最後にブルームバーグの画面。

bloomberg

株価は25.49豪ドル、時価総額は1331.5億豪ドルとなっています。

というわけで3社とも同じ株価なのに時価総額の表示が異なってしまっています。私の計算結果とも違います。

考えられる理由の一つは、計算方法の違いです。

私の場合は、英国のBHP Billiton Plcの全株がすべてBHP Billiton Limited株になったと仮定し、ASXでの株価を掛け合わす方法で時価総額を算出しました。計算式は以下の通りです。

〔(BHP Billiton Limitedの株式発行数)+(BHP Billiton Plcの株式発行数)〕×(BHP Billiton Limited株の株価) 

もう一つ考えられる方法は豪と英の株式をそれぞれの株価で掛け合わせた後、合算し、その後に豪ドルに変換するというものです。式に直すと以下の通りです。

(BHP Billiton Limited(豪)の発行株式数)×(BHP Billiton Limited(豪)の株価) + 〔(BHP Billiton Plc(英)の発行株式数)×(BHP Billiton Plc(英)の株価)〕×(豪ドル/英ポンド)

以上の2つの方法は、やっていることは同じです。しかし、それでも違う計算結果になるのは

  • グーグルファイナンス、ヤフーファイナンス、ブルームバーグの想定為替レート(豪ドル/英ポンド)が異なる。
  • BHPBilliton Limited(豪)とBHP Billiton Plc(英)の株価が異なっている。つまり、互いに片一方が過大評価され、もう片一方が過小評価されている。

というのが原因だと私は思います。それでも3社とも時価総額が違うというのはどういうことでしょうか・・・。各社がどう計算したのか知りたいところです。

上記でサラっと書きましたが、BHP Billiton LimitedとBHP Billiton Plcはどちらも1株あたり同じ議決権、同じ配当金を得られるので、常識的に考えると全く同じ株価になるはずです。でも実際はどうかというと、2015年8月28日現在ではBHP Billiton Limitedの株式1株よりも、BHP Billiton Plc株式1株のほうが高く評価されています。

いろいろ比較すると面倒なので、ブルームバーグの株価サイトの数値を用います。

2015年8月28日のBHP Billiton Limitedの時価総額は上記画面の通り1331.5億豪ドル。

2015年8月28日のBHP Billiton Plcの時価総額は620.4億ポンド。

BHP plc share price bloomberg

 

2015年8月28日の豪ドル/ポンドはオーストラリア準備銀行(RBA)のおける為替レートは0.4645。つまり1豪ドル=0.4645ポンド。

BHP Billiton Limited 株の時価総額をポンドに直すと、1331.5億豪ドル×0.4645=618.48億ポンド

BHP Billiton Plc株の時価総額は620.4億ポンドなので、約2億ポンドだけ時価総額が異なっています。 

 

二元上場会社の株価の違い

上場している証券取引所が違うだけで、同一の事業体の株式評価額がなぜ異なるのでしょうか?

経済学者がこの現象を説明しようと努力しているようです。たとえば、上場している証券取引所の所在する国の通貨の違い、政府のリスクの違いとか、税制の違いなどの原因が挙げられています。

しかし、現時点の結論は「なぜ株価が異なるのか分からない」というもののようです。なんじゃそら、という結論ですが株価というのは合理的理由だけでは決まらず、人間の感情によって揺れ動くという状況証拠といえるかもしれません。

BHP Billitonだけでなく、別の二元上場会社も証券取引所によって株価が乖離する現象がおこってました。2004年まで二元上場会社であったロイヤル・ダッチ・シェルは、1980年代はじめ、オランダのロイヤル・ダッチの株価が低く評価され、英国のシェルの株価が高く評価されていました。

当然、株価が低いロイヤル・ダッチについてロングポジションをとり、株価が高いシェルについてショートポジションをとれば、株価が収束すればどちらからも利益を得られます。金融機関もそれを狙っていたようです。

また、潰れてしまいましたが、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)もロイヤル・ダッチ・シェルの2つの異なる株価を利用したアービトラージを仕掛けていたようです。しかし、価格差が収束する前に、1998年の一連の通貨危機での影響で強制決済せざるをえず、損を出してしまったようですが。

二元上場会社では株価が異なるふたつの株式が存在するものの、片方の株式を取引通貨が違うもう片方にすぐに交換できるわけでもないため、株価の違いを利用したアービトラージは難しい、というのが現時点での認識のようです。(BHP Billiton の場合アメリカのADRならできるのかもしれませんが・・・)もちろん両方の株価の乖離が大きい場合はアービトラージも成功する可能性が高まると思いますが、私自身はアービトラージ取引をする予定はありません。

上記の現象は「株価は合理的理由なく形成される」というのが現れている事例ではないかと思います。私は天井付近で株を売ることができるよう、一応株式のバリュエーションを行っていますが、あまり重視していません。株価に振り回されず、いい企業を問題がなければ長期間持つ・明らかに安すぎる企業を買う、ということが大事だと思います。

 

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